面会した医師の意見書の要点

面会した医師の意見書の要点

※役職などは当時のもの

秋元波留夫医師ー金沢大学名誉教授・東京大学元教授

(意見書2006年2月28日付け 2、3ページ)

西山鑑定人の鑑定は、その結論の誤りに止まらず、それを導いた鑑定の手順についても司法精神医学の知見に反する不備なものであり、到底支持するに耐えない

現在の精神状態は拘禁精神病であり、拒否と無言を主要症状は昏迷状態であり、意思疎通が著しく困難であり、従って、訴訟能力の欠如した状態である

(控訴棄却に対する意見書 2006年4月7日付け 2~3、6ページ)
わたしは麻原の現在の精神状態は拘禁反応の昏迷状態に該当し、訴訟能力を失った状態であり、即刻公判を停止して、専門の治療施設に移し、その回復を待って、公判を開始すべきであるとの結論に達した。

拘禁反応の状態は少なくとも1997年から現在まで、10年近く続いているとしなければならない。

野田正彰医師-関西学院大学学長室・教授

(意見書 2006年1月9日付け 2、4ページ)

症状をみると、心因性の昏迷状態である。

被告と意思疎通がまったく出来ないことは、私も含め、検察官も弁護人も、二人の精神科医も、東京拘置所長も認めている。

訴訟能力とは、訴訟の意義を理解し、自己を防衛することのできる能力と解するならば、公判当初は訴訟能力に問題はなかったものの、現在、意思能力があるとは考えられず、一時的であろうが訴訟能力はないとみなすべきである。このまま出廷させ、眼を閉じ、独語し、空笑もどきのひとり笑いをする被告に控訴審を受けさせるのは難しいであろう。

半年内の治療で軽快ないし治療する可能性が高い

(西山鑑定に対する意見書 2006年3月6日 2、4~5ページ)

読んでいて論理構成がわからず、矛盾が多く、そういう文章の積み重ねがこの「鑑定書」である。

西山医師がやるべきことは、実際に被告人を十分に観察し、診察し、意思の疎通が出来たこと、それゆえ、弁護人が言ってる意思の疎通ができないという主張は不当であり、他の鑑定は不当であるという主張をしないと意味がない。西山医師は、それを回避している。

この対話形式の記述は、別に記録者がいて記載したものではない。ビデオでも撮っていない限り、自分が質問をしてるのに、被告人が後ろにまわしたとか、診察状況からこんなことを詳細に記録できるはずがない。一事が万事このような信頼できない記述になっている。

 

小木貞孝(加賀乙彦)医師-元東京拘置所医務部勤務・元上智大学心理学科教授

(日付なし 7ページ)

①被告人松本智津夫は原始反応性の昏迷状態にあり、はっきりとした拘禁反応の状態を示していて、言語により意志の疎通は不可能であり、訴訟能力はない。
②西山詮の『精神状態鑑定書』は、被告人松本智津夫の基礎性格である空想虚言症を見落としており、また精神医学用語の使用に誤りがあり、また拘禁反応の診断においても誤りをおかしていて、到底信頼できない結論を提示している。

 

A医師

(意見書2005年7月27日付け 27~29、36、39ページ)

本件被告人の現在の状態については、訴訟無能力が認められるべきであると考える。その根拠の第一は、被告人の呈している症状が非常に重篤であるという事実である。被告人の現在の状態は昏迷であり、公判の場のみならず、弁護人との接見活動においても、被告人本人の意志が確認できないという点で、大きな支障を来している。

第二の根拠はヒステリーという病態の理解である。拘禁反応という疾患は少なくともその一部をヒステリー反応として考えるべきであり、被告人の場合もこの機序が大きく働いている。

第三に、被告人の病状の経過をみても、訴訟能力が失われていく過程をみてとることができるという事情による。

仮に第一審の死刑判決が確定すれば、今度は心神喪失の状態に在る者の死刑執行を禁じている刑事訴訟法479条1項との関係が問題になる。被告人の昏迷状態が続く限り、死刑の性質を理解しているかどうかの判定は困難であり、その執行の適否には大きな疑間が生じる。死刑判決を受けたまま、執行ができない死刑囚として、長く中途半端な地位に被告人を留め置くことになる可能性が非常に高い。

主文

1 被告人は現在、拘禁反応に罹患していると考えられる。
2 被告人は現在、拘禁反応によって昏迷状態を呈しており、疎通がとれない状態にあること、および拘禁反応の精神病理学的特質から、訴訟能力を欠いていると考えられる。
3 被告人には早急に適切な場所で精神医学的治療が加えられるべきである。

(意見書補充書 2006年3月2日付け 3、4ページ)

西山鑑定書および佐藤意見書は、いくつかの点で中島直意見書を批判するが、多くの点について論及を避けている。その中の重要な一点に、ヒステリー概念に関する検討がある。(中略)ヒステリーの中には病者の意志が見え隠れするが、これを病者の意志と同一視することは誤りである。

意見書が挙げているにもかかわらず西山鑑定書および佐藤意見書が論及を避けている論点の重要なものの第二が、この改善過程の説明である。弁護団との信頼を回復するような明確なエピソードは得られていない。この不連続生は、被告人の病状が単なる意志ではないことを示している。病的なものが、はっきりと否定できないほど関与しているのである。

岡崎伸郎医師

下記記事にて、意見書全文掲載。

「麻原彰晃こと松本智津夫の精神状態に関する意見書|岡崎伸郎医師(全文)」